体外受精や顕微授精で良好胚を繰り返し移植しても、胎嚢が確認される妊娠に至らない状態を指します。hCG陽性やごく早期の妊娠反応が認められても子宮内に胎嚢が確認できない生化学的妊娠も含まれます。
不育症(反復流産)とは、流産や死産を2回以上繰り返す状態を指します。妊娠は成立するものの継続が難しいことが特徴で、原因は一つではなく複数の因子が重なっていることも少なくありません。 流産は決して珍しい出来事ではなく、妊娠の10~15%に起こるとされていますが、反復して起こる場合には医学的評価が必要です。適切な検査によって原因が明らかになると、治療により妊娠継続率が改善する可能性が高まります。
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・プロラクチン |
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・超音波検査 |
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・血液染色体検査 |
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・抗核抗体、ループスアンチコアグラント |
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・凝固第12因子 |
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・Th1 / Th2 |
プロラクチンは授乳に関わるホルモンですが、数値が高いと良好な卵胞が形成されず、排卵障害や黄体機能不全を通じて着床障害や流産のリスクとなります。治療はカベルゴリン週1回内服していただきます。
甲状腺ホルモンは排卵・着床・妊娠維持に関わります。甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンが不足している状態)・亢進症(甲状腺ホルモンが過剰な状態)のいずれも着床障害や流産のリスクに関連します。甲状腺機能検査として、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺ホルモン(freeT3, free T4)を測定します。異常が疑われる場合は、場合により専門医による精査を行います。
持続する高血糖やインスリン抵抗性の亢進は、卵子成熟や子宮内膜受容能に影響し、着床障害や流産リスクに関連します。そのため、糖尿病と診断されている方は内科専門医のもと、妊娠前から血糖値を適正に管理することが重要です。一方、インスリン抵抗性とは血糖を下げるホルモンであるインスリンの効きやすさの指標です。インスリン抵抗性が高い状態は、正常な血糖を保つために必要なインスリン量が多くなっている状態を示します。
子宮の形や内腔の変形が子宮内膜の受容性や局所環境の悪化に繋がり、着床障害や流産のリスクになることがあります。子宮形態異常には、先天性の子宮奇形(双角子宮、中隔子宮、単角子宮など)、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮腔癒着症などが挙げられます。影響の程度は病変の種類・位置・大きさによって異なり、診断は超音波検査、子宮卵管造影検査、子宮鏡検査、MRIなどを組み合わせて行います。また、子宮卵管造影検査での卵管水腫の有無の確認も重要です。卵管水腫があると貯留液の子宮内腔への逆流による着床環境の悪化と関連することが報告されています。
治療方針は、病変の種類・位置・大きさ、内腔変形の有無、年齢や妊娠歴、今後の妊娠計画を総合して決定します。手術により妊娠継続が期待できる場合があります
染色体とは、人を形作る遺伝子が集まってできた46本からなる構造物です。その染色体の数や形に異常が存在する場合は、不妊や不育症になることがあります。
不育症の夫婦では、約5%に夫婦のどちらかに染色体異常が認められます。染色体異常が存在すると、高い割合で赤ちゃんに染色体の異常が生じ、それが流産の原因となります。染色体異常の多くは転座といわれる染色体が入れ替わっている異常です。
夫婦の染色体検査(血液)は、採血により約4週間で結果がわかります。ただ、この検査は遺伝情報を知る検査ですので、実施前には遺伝カウンセリングが必要となります。
自己免疫とは、本来は細菌やウイルスなどの外敵に反応する免疫が、誤って自分の成分を標的とする現象です。このときに作られる自己抗体は、低値であれば健常でも検出されますが、持続して高値となる、あるいは病的な活性を示す場合には、微小血栓や炎症、子宮内膜の受容性低下を介して着床不全や反復流産に関与することがあります。なかでも抗リン脂質抗体(ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体、抗β2グリコプロテインI抗体)は妊娠転帰と関連しており、流産・胎児死亡・血栓症の臨床所見を伴う病態は抗リン脂質抗体症候群と定義されます。抗リン脂質抗体は子宮内の微小血栓形成や局所血流低下を介して妊娠の継続に影響すると考えられています、以下の抗リン脂質抗体をはじめとする自己抗体を調べています。
結果は臨床背景と合わせて総合的に判定します。適応がある場合は低用量アスピリンやヘパリンなどの抗血栓療法を用いることがあります。
凝固因子や血小板などに異常がある場合、血栓を形成しやすくなり、着床や胎盤形成に影響することがあります。検査として下記項目等を調べています。
治療の目的は、血栓形成リスクを低減し妊娠継続を助けることにあります。治療の適応は自己抗体の種類・力価、凝固検査の結果、年齢や既往歴、流産歴等を総合して個別に判断します
低用量アスピリンは、血小板の働きを抑えて微小血栓の形成を予防する内服薬です。検査の結果、血栓傾向が疑われる場合に、妊娠継続を助ける目的で標準的に用いられています。
アスピリン100 mg を1日1回内服を基本とし、開始時期は排卵後や胚移植前後など背景により調整、妊娠成立後もしばらく継続します。終了時期は週数とリスクに応じて個別に判断します。特に抗リン脂質抗体症候群では、低用量アスピリン(必要に応じてヘパリン併用)が流産予防に有用とされています
ヘパリンは、抗凝固作用によって微小血栓の形成を予防する注射薬です。低用量アスピリン単独では効果不十分な場合、抗リン脂質抗体症候群など血栓リスクが高い場合、流産を2回以上繰り返されている場合で使用を検討します。
投与は原則、自己注射で1日5000~10000単位を毎日投与します。
副作用は頻度こそ高くありませんが、出血傾向、血小板減少、骨密度低下が知られており、適宜、血液検査で評価します。終了時期は週数とリスクに応じて個別に判断します。
自己免疫の関与が疑われ、上記の抗血栓療法(低用量アスピリン、ヘパリン)のみでは不十分と判断される場合、免疫抑制療法として短期間の副腎皮質ステロイド(プレドニン)を併用することがあります。目的は過剰な免疫反応や炎症性反応を抑え、妊娠初期の環境を整えることにあります。長期投与はせず妊娠初期に限った使用が望ましいと考えています。
柴苓湯は補助療法に位置づけられる漢方薬です。水分代謝や炎症反応の調整を通じた免疫調整効果が期待されます。
ヒトの体には自分自身の組織を正常に保つため、「免疫」という力を持っています。妊娠は母体と遺伝情報の一部が異なる胎児を受け入れる過程であり、母体側で過剰な免疫反応を抑制する「免疫寛容」が求められます。免疫の調整には多くの細胞が関与しますが、特にヘルパーT細胞(Th)が重要になります。ヘルパーT細胞には主にTh1とTh2があり、両者のバランスが妊娠維持に影響すると考えられています。Th2活性が相対的に高い方が妊娠継続に有利とする報告はありますが、過度の偏りはいずれも望ましくなく、着床障害の方では、必要に応じて血液検査でTh1/Th2活性を評価します。
治療にはタクロリムスという免疫抑制剤を使用します。
不育症の治療で欠かせないのが、Tender Loving Care(テンダーラビングケア)です。
Tender Loving Careは、「優しく愛情をもって患者に接する」という意味があり、なかなか赤ちゃんを得られない不育症の患者さんに対して、メンタルケアを行う治療法とされています。
不育症は全てのメカニズムが解明されているわけではありませんが、患者さんの精神的なストレスの解消によって赤ちゃんの獲得率が上昇するといわれています。